高耐久の無機塗料ってどんな塗料?メリット・デメリットは?

こんにちは。

外壁塗装の塗料を選ぶ際に無機塗料ってどんな塗料と聞かれることがあります。インターネットなどでもフッ素より上位に位置する最も良い塗料として紹介されていたりします。ただ、実は完全な無機塗料はほとんどありません。基本的にはアクリル・シリコン・フッ素等の樹脂と混ざっている塗料のことです。何が無機なのかどの程度入っているかでかなり性能差が大きいですので単に無機塗料だから最も良い塗料ということではありません。そのあたりで無機塗料もかなり誤解されている塗料でもあるので一度解説をしていきたいと思います。

 

■目次

  1. 無機塗料とは?
  2. 無機塗料の特徴
  3. 無機塗料のデメリットは?
  4. まとめ

 

■無機塗料とは?

まず無機塗料と呼ばれている塗料とはいったいどんな塗料なのかについて解説していきたいと思います。

そもそも無機とは、有機物(炭素)が含まれていない物質のことです。代表的なものはガラスや石や金属などです。無機物は紫外線の影響を受けないのでそれこそ何百年という耐久性があるものです。ただ、無機物だけで塗料を作るとガラスを想像してもらうとわかりやすいですが、その性質上硬くなるため塗料としては適していません。そのため一般的な塗料に使うアクリルやシリコン、フッ素等の樹脂に混ぜることで塗装できるようにしたのが、一般的には「無機塗料」とか「無機ハイブリッド塗料」などと呼ばれています。そもそもどのくらい無機成分があれば無機塗料と呼ぶのかという規格は決まっていません。そのため塗料によって無機成分の量は違います。無機成分は「紫外線に強い」「燃えない」「汚れが付きにくい親水性が高い」とういう有機樹脂にはない塗料として良い特徴がある一方「硬い」「混ざりにくい」等の塗料として不向きな性質が混在するので、樹脂との配合割合で塗料としての性能を作る必要があるのでどのような性質を残すのかで配合率が変わります。

また色を付けるための顔料にも有機顔料と無機顔料があります。当然有機顔料は劣化していきますので無機顔料の方が劣化しにくいのですが、無機顔料では出せる色が限られるので無機顔料を使う場合にも色によっても性能が変わってくる場合があります。

つまり、無機塗料といってもほとんどは樹脂に添加されているハイブリッド塗料がほとんどです。

昔一時期ガラスコート的な無機成分がかなり多く「30年以上の耐久性」とした塗料が有名なメーカーから販売されていたことがあったのですが、耐久性を重視して無機成分が多かったことで確かに耐久性や汚れを落とす効果が非常に高かったのですが、塗料として硬すぎて数年で蜘蛛の巣のように微細な日々が入り白く曇ったようになった事例が多数あり販売が停止されたことがあります。そのくらい戸建ての場合は、壁は常に風に微細に揺れているのとサイディングは熱がこもりやすく熱膨張と収縮が起こりやすいので伸び縮みがあるのである程度の柔軟性が必要です。そのため各メーカーとも無機成分の配分量を調整して一定の柔軟性(可撓性)を持った塗料として完成させています。

このように無機成分のみで塗料を作ることができれば理論的には色褪せ等の劣化をほとんどせず風化する以外に劣化することがない塗料が作れるのですが、色が限定されたり非常に高価であったりするために現実的ではありません。

無機塗料と呼ばれるものにするには「樹脂に無機成分を混ぜる」「無機顔料を使う」という2つの要素の組み合わせです。各メーカーの塗料はその2つの要素を踏まえて塗料を作っています。

 

■無機塗料の特徴

無機塗料にはその無機成分によってもたらされる塗料としての特徴が大きく4つあります。

①20~25年もの高い耐候性がある

②カビコケが繁殖しにくい

③汚れが落ちやすい

④燃えにくい

それぞれの特徴について解説していきます。

 

①20~25年もの高い耐候性がある

無機塗料最大の特徴はその耐候性(紫外線に対する強さ)の高さです。これは、無機成分自体は石やガラスが外にあっても劣化してボロボロになったりしないのと同じで紫外線による劣化をほとんど起こさないからです。そのため、おおむね大手メーカーの無機塗料の耐用年数は20~25年くらいと言われていて、今まで最上位であったフッ素系塗料を押さえて最長となっています。

以下は、国内大手メーカーの日本ペイントが出している、無機塗料(アプラウドシュラスターⅡ)の試験結果です。

これは、耐候性試験という紫外線の影響での色褪せや光沢の低下を測るための試験で太陽光に近い光を放つランプ(キセノンランプ)を一定時間当てて劣化具合を試験したものです。このような試験を促進耐候性試験と呼びます。

この試験においてこの無機塗料(水色グラフ)は、同社の他の塗料であるシリコン(緑色グラフ)の倍以上の時間ランプを浴びても光沢保持率90%を保っています。一般的に光沢保持率は80%を下回るとくすみを感じるようになるので80%を下回る時間が重要視されるのですが、この結果では長時間当ててもほとんど光沢保持率か変わらないので、塗膜が非常に強いということがわかります。

 

②カビコケが繁殖しにくい

無機塗料は、カビやコケ、藻が生えにくい性質(防カビ・防藻性)を持っています。なぜなら、カビやコケなどは生きていくために栄養分である有機物が必要になるのですが、塗膜の中にその有機物の含有量が少ないため育ちにくいからです。(完全に滅菌するわけではありません。)戸建ての場合、北面にお風呂やトイレなどの水回りなどが設置されてる場合が多いですが、そのような湿気が多い箇所がカビやコケの繁殖場所になりやすいです。カビやコケは建物の見た目を悪くしてしまいますし、根を張ることで建材自体を傷めることもあります。

以下は、国内大手メーカーの関西ペイントが出している、無機塗料(アレスダイナミックMUKI)の試験結果です。

 

無機塗料を使うことによって、見た目を綺麗に保つこともでき、壁や屋根の素材そのものも保護することができるのです。

 

③汚れが落ちやすい

無機塗料は、低汚染性と言って表面に着いた汚れが雨で流れ落ちやすく、美しさを保ってくれます。これは無機塗料の塗膜表面が水となじみやすい「親水性」という性質をもっていて水が面となって流れる性質があるので、上に付着している埃や排気ガスの塵等を雨が降ることで洗い流してくれる性質があるからです。無機塗料は無機成分を樹脂に配合する過程において有機樹脂のみの塗料に比べ樹脂同士の結合力を高めることになります。そのため塗膜表面の樹脂の結合力(正確には架橋密度)が高いので親水性も高くなります。

ただし、汚れがすべて完全に流れるわけではありません。

以下は、国内大手メーカーの関西ペイントが出している、無機塗料(アレスダイナミックMUKI)の試験結果です。

大通り沿いや公園・山の近くなど砂埃や塵が多くどうしても汚れが付いてしまう立地のお家には、とても嬉しい機能になっています。

 

④燃えにくい

無機塗料は非常に火に強く、燃えにくいという特徴があります。これは、そもそも無機物は燃えにくい(不燃性の)性質のものだからです。有機物は炭素が含まれるので燃えると二酸化炭素が発生し、黒く焦げて炭になります。また有機物のほとんどは化石燃料からできているので燃えるとガスが発生し燃焼しやすくなります。一方で、無機物であるガラスや石は火をつけても燃えてなくなったりしませんよね。このように無機成分が多い塗料であれば、難燃性を持つ塗料もあります。

ただし、無機塗料と言っても今まで説明したように100%無機成分でできているわけではなく、有機成分も含んでいるので、全く燃えないわけではないのですが、それでも有機塗料と比べて十分燃えにくいです。そのため万が一近隣の火事などが飛び火してきても燃え移りにくいため、二次災害の確立を低くすることができるかもしれません。

 

■無機塗料のデメリットは?

今まで説明したように、無機塗料は非常に優れた特徴がある塗料ですが、万能というわけではなく、当然デメリットも存在します。ここでは大きく分けて3つを紹介します。

特に高耐久性の塗料を使う場合には何度も行う工事ではありません。通常の塗料を使っても一生に3回するかしないかなのが塗装工事ですから、注意点もしっかり理解した上で決定し、こんなはずではなかったという失敗を防ぎましょう。

 

①価格が高い

無機塗料は高機能で長く持つ塗料ですが、その分費用が高いです。塗料自体の価格を比べるとシリコン塗料の3倍~5倍の価格になります。と言っても実際に塗装する際には塗料の比率より職人さんの塗装費用の割合が高く、その部分はシリコン塗料と違いはないので、その分価格差は少なくなりシリコン塗料の1.8倍~2倍、フッ素塗料の1.5倍ほどになります。塗装は家全体を塗っていきますから、20坪ほどの家の場合で価格差は20万円~40万円ほど違ってきます。ただ、優れた特徴や塗替え回数を考えると長い目で見るとお得になる場合もありますので、無機塗料を使いたいけれども金額面がネックだという方は、ローンの活用を視野に入れてみると良いでしょう。月々の負担感が減って、将来の費用計画も立てやすくなります。

 

②職人の知識・技術が必要

これは無機塗料に限ったことではありませんが、塗装工事は塗料の性能より職人の知識・技術の方が重要です。どんなに素晴らしい性能を持った塗料でも、施工の質が悪ければその性能を発揮することができないからです。例えば、塗装前の下地処理が足りておらずすぐにひび割れが起きたり、下塗り塗料(外壁材によって変える必要がある)の選定を知識が無いせいで誤って、せっかく塗ったのに短期間で膨れや剥がれが起きてしまったり、という不具合が起こり得ます。

元々が性能の良く強固な塗膜を作る無機塗料だと、万が一工事品質が悪かった場合に手直しがしにくい場合がありますし、費用が高い分不具合があった場合の気持ちの落差というのも激しくなってしまいます。せっかく真剣に選んで塗装したのに、無駄になってしまっては意味がありませんよね。

しかも無機塗料は比較的新しい種類ですので、まだ使った経験がない・知識がない業者も当然存在します。

無機で塗装をお考えの方は、“無機塗料の”施工実績が豊富な業者に依頼するようにしましょう。

 

③無機塗料は商品によって質に幅がある

一口に無機塗料と言っても、実は様々なメーカーが出していて数多くの種類があります。例えば日本ペイントでも2種類の無機ハイブリッド塗料があります。無機と謳っていても中にはシリコンやフッ素とあまり変わらない耐久性のものもあります。

 

なぜなら、今のところ“無機物が何パーセント含まれていたら無機塗料”という定義が決まっていないからです。

例えば、シリコン系塗料にほんの数パーセント無機成分を入れ込んだだけでも、無機塗料と表記できてしまいますし、今流行りのラジカル塗料は顔料を鉱物の一部であるチタンでコーティングしていたりするので考え方によっては無機塗料とも言えなくはないからです。大手メーカーのようにアクリル・シリコン・フッ素と様々な樹脂の塗料を作っていて自社塗料との比較ができるような場合であればさすがにそのようなごまかしがきかないと思います。

 

もし質のよい無機塗料で塗装工事をしたいのであれば、選ぶ材料には実績のある大手塗料メーカーの製品で、カタログなどにきちんと試験結果(促進耐候試験や屋外暴露試験という、紫外線に当てて劣化度合いを見る試験)が掲載されているか確認しましょう。そして試験の結果はあくまでも試験結果です。商品自体の販売実績がある程度ある塗料を選ぶようにしましょう。

また業者選びをする際には、見積書に単にフッ素や無機塗料とだけ記載している業者もいます。きちんと見積書に“〇〇と”メーカーの名前が書いてあり”△△△“ときちんとした正確な塗料名が明記してある業者を選びましょう。

 

中には、自社のオリジナル商品などと言ってあまり質の良くない塗料を高値で販売する悪徳業者も存在します。

万が一にも騙されないように、具体的な塗料名を明記してもらいましょう。

 

■まとめ

無機塗料はまだ販売され始めて間もない商品も多くあります。しっかり施工さえできればその性能は他にはないものがあるので施工業者が無機塗料の施工経験を持ちしっかり施工できる技術があれば素晴らしも結果になる可能性がある塗料です。一般的な塗料と比較すると1回の工事費用は割高ですが、高耐候性であることや汚れが付きにくい性能などを考えて長い目で考えると費用対効果は高い塗料でもあります。ただ、中には無機という名前がついていても性能が高くないものも混在している状態なので塗料選びや業者選びは慎重にしましょう。

 

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